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ドジョウの命 [生き物の強さ]

ドジョウの命 

父と小さい頃よく近くの小川に

ドジョウすくいに行ったものだ。

竹を編んだ楕円形の籠を持って水草に覆われた幅

1メートル前後の小川の中をさかのぼりながら、

ドジョウの住んで居そうなところの先に籠を立てかけて、

その中にドジョウを足で踏みながら追い込んでいく。



小生はすくい上げたカゴの中からドジョウを拾い上げ、

ぶら下げているバケツに入れるという流れ。

 


籠を水からすくい上げてから泥水がかごの

隙間をぬって流れ落ちていくうちに、獲物の姿が現れてくる。

 



ドジョウをはじめ、フナやオタマジャクシ、イモリ等々、

今度は何が取れているか? 


籠の中の泥水がはけるまでは何が入っているかわからない。

 


その瞬間に味わう興奮は今も脳裏に焼き付いている。

 

1時間もすればほぼバケツ1杯になる。


農作業の合間に、なんでそこまでやるのか、

ドジョウ汁を作る為である。

 


味噌味のドジョウのだしの効いたうどんは格別。父はそれが大好物だった。


その父も病に伏せ食欲も少なくなった。


秋も深まりつつある頃、父に元気づけのため、

従兄弟が父の為にドジョウを、養殖している店から買ってきてくれた。

 



母はさっそく料理にかかり、懐かしい香りが家中に立ち込めてきた。

小生もその恵みにあずかり昔を思いだした。父も同じではなかろうか。

 

昔と今を結び付けてくれるドジョウの命。

次の日、母が「あらま!ここにもう一匹いる」

ドジョウが流し台の穴に残っていたのだ。


生きている! 一匹だけを料理するわけにもいかず

どうしょうかな?

みんなでしばらく考えた末の結論は、

玄関にある金魚の水槽にとりあえず入れよう。

 


ということで食用から観賞用となったそのドジョウは、

今も元気で大きく育っている。



このドジョウの命は今後、

我が家庭に何をもたらせてくれるのか?


少なくとももう食べる気にはならない。

 


小鳥と蛇 [生き物の強さ]

小鳥と蛇

日々の生活の中では、煩わしい人間関係より自然の世界に心が向く小生は鳥の観察や
小川での魚捕りが好きだった。

野鳥とはなかなか近寄ることができないので家で小鳥を飼うことにした。
手引書を見るとまず飼いやすい種類の鳥から始めると良いとのこと。
それは十姉妹であった。

さっそく近くのペットショップから籠、餌を買い、つがいの十姉妹を手に入れてくる。
勉強部屋の中で一緒に生活が始まる。オスの鳴き声に癒されながら飼っているうち、巣の中に5から6個の卵が生まれた。交代で仲良く卵を温めている。本能とは言えよくできているものだ。

あるとき部屋で休んでいると、天井のパネルの隙間から紐のようなものが出たり入ったり。
一体何だろう?
不思議に思っただけで深くは考えなかった。その隙間とは、以前天小生が天井裏で遊んでいるとき足を滑らせて誤ってパネルを踏み、へこませて隙間を作ってしまったのである。

そのままにしていたのが良くなかった。数日後、早朝から胸騒ぎがする。よく寝られず、鳥小屋を見るとなんと蛇が入り込んでいた。

なにか騒がしかったのは鳥が暴れていたからであった。当然蛇の仕業であるが、止まり木に止まっていたのはオスの十姉妹のみで、あばれつづけたようで止まり木にぐったりした様子ですくんでいた。

一方蛇は金網の隙間から出られなくなっている。膨らんだお腹のため、首から先だけ出してあえいでいるようだった。そのお腹には言わずと知れた母十姉妹と温めていた卵が入っているのである。

はっと、その時気がついた。
以前天井で動いていた紐のようなものは実は蛇のしっぽだった事を!
その時には既に小鳥の匂いを嗅ぎつけていたのだ。

テレビでよく見る野生の動物の凄惨な生き様を身近に見たようで、オスの十姉妹にはもう一度、メスの十姉妹を迎えさせてあげた。
今度は無事に5羽のひなを産んでくれた。

母と野良猫の絆 [生き物の強さ]

母と野良猫の絆

両親は専業農家で、村の中では堅物な真面目夫婦で通っている。
朝早くから夜遅くまで働く両親の姿を見て育った小生は、将来の子供の教育の為に働いているという事はよく知っていた。尋常小学校しか出ていなかった父親は、家の都合で学問を極めていくことができず、そのような思いを子供にはさせたくないとつねずね言っていたからだ。

そんな我が家に、一匹の白と黒のまだらのメス猫が家の近くに住み着くようになったのに気づいた。
あるとき、学校から帰ってみると母が家の中でその猫を追い回している。隙間を縫ってその猫は外に逃げていったがそれをよそ目に、母に聞いた。「どうしたん?」
母は「あの猫が最近餌を狙って家の中までやってくる、困ったね」と一言。

田舎の家は今はそうでもないが、以前は鍵をかける風習などなかった。
その猫は、なんと餌を狙って戸を開けて入ってくるのだ。
準備した食事のおかずが荒らされるのは母にとっては我慢ならないらしい。

それもそうだ。朝一番に田んぼに出て、しばらくして朝食の準備で帰って終われば片付け、昼食の準備をしてからまた仕事。昼食に帰ってから片付け、夕食の準備をしてからまた仕事。
夕食が終われば片付け、洗濯、縫い物、朝食の準備などなど。休む暇がない。子どもを養う為父親と必死で働いている母親を見ると何も言えない。

そうこうして何日かたったある日、庭の片隅に猫の餌らしきものが備えられていた。これをしたのは母親しかいない。なんで追い回していた猫にこんなことを?

解答はすぐに解った。夕方、なんとそこには例の猫が餌を食べに来ていたが、そのそばにはおどろくなかれ!3匹の生まれたての赤ちゃん猫がオッパイをのみながら寄りそっていたのである。
3匹の子猫の命は、母親に追い回されていた母猫に託されている。母は、子育てのために必死で生きている母猫と、自分とが重なってみえたのかもしれない。

この猫の親子の絆を通して両親からの愛情を教えられた。あの母猫と3匹の子猫は今頃どうしているだろうか?

母豚と子豚 [生き物の強さ]

親豚と子豚

小生は、真面目と堅物を織り交ぜた両親の下に育ってきた。
畑で取れた野菜の残り、家でできた、残飯など無駄にしないようにと、
それを餌にして育てていったた。

その豚の世話が小生の仕事。
なんで臭くて面倒な豚の飼育をしないといけないのか?

そんな思いは時が経つにつれて変わってきた。

庭に豚小屋を作りメス豚を飼っていた。
小さいころから小生は豚の出産を
目の当たりにするチャンスに恵まれた。

よくあのお腹にたくさんの子豚が
入っているものだと感心していた。

普通10匹から多くて15匹生まれる。
生まれたての子豚は誰に教えられるわけでもなく
母豚の乳首に吸いついてオッパイを飲む。

不思議なことに一度子豚の授乳位置が決まるとそれが
定位置となって育っていく。

乳の出具合は前足から数えて3番目、4番目くらいが最もよい。
従ってその位置に定着した子豚は最も成長が早い。

寒い季節の時は授乳が終わると子豚は暖を取るために
小部屋を用意し電気の暖房装置をつける。ある晩、
えらく外が騒がしい。
近所の人がバケツを持って走り回っている。

事の次第は子豚の部屋から漏電か?
出火して小屋が燃えている。

子豚の鳴き声、母豚の鳴き声、
人の叫び慌が入り混じり、あわただしい夜だった。

そんな中で、あまりに暑かったのか母豚は
柵を乗り越え外へ出てしまった。
しかし子豚は中で泣き叫んでいる。

小生は水を汲んで手伝うくらいしかできなかったが、
子豚が苦しんでいる。とその時、
想像していなかったことが起こった。

それは一度飛び出た母豚がまた子豚が鳴き叫
んでいる小屋の中に入って行ったのである。

抱き上げて助けることが出来るわけでもないのに
鼻をクンクン子豚をあやすように摺り寄
せている姿は人の目に涙を誘った。

やっと火が収まった時は13匹いた子豚は2匹しか
残っておらず、母豚は鼻のあたりに火傷を負っていた。

一休みして朝を迎えた時、まだ小屋には焼け焦げた
匂いがあり、11匹の子豚に涙が溢れてならなかった。
それにしても母豚の子豚に対する
愛と言おうかその本能は素晴らしい。

残った2匹はすさまじい勢いで成長を遂げ、子豚としては
今までにない大きさに育った。






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